畳の匂い。 祖父母の匂いだ。 マッチをおこし、半分に折った線香を灯す。 ゆらゆらと昇る懐かしい薫りを目で追えば、経年を感じさせる些か黄ばんだ壁に祖母と祖父の遺影が並んでいた。 父方の祖父母は、自分の出生と同時に建てたという団地の一軒家で一緒に…
夜の帳は、地面に残った子供達の痕跡を包み込むように辺りに鎮座していた。 ブランコと鉄棒、タコの形をしたアスレチックの遊具が設置された第二公園の一角、手狭なグラウンド脇のベンチに栄治は陣取っていた。 Tシャツに羽織ったパーカーのポケットからラッ…
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